“タブー”に挑み、10 万 DL を突破──自慰記録アプリ『アイナーノ』の軌跡と未来

「性を扱うアプリを作る」──それだけで、眉をひそめる人もいます。性に関するアプリは、その性質ゆえに賛否が分かれやすく、様々な声が寄せられる分野だと感じています。それでも、この領域にこそ誰かの役に立つ可能性があると信じて、密かに、慎重に、そして真剣に、自慰行為を記録するアプリ『アイナーノ』を作り続けてきました。

アイナーノ | ダウンロード リンク
iOS: https://apps.apple.com/jp/app/id6587551910
Android: https://play.google.com/store/apps/details?id=cutboss.einano.deluxe&hl=ja

「自慰行為を数値として捉え、それを可視化する」という発想から 2018 年に開発を始め、少しずつ改善を重ねる中で、ユーザも徐々に増えていきました。2024 年末には、お陰様でダウンロード数が 10 万を突破し、多くの方にご支持いただけているのだと実感しました。開発者としてこれほど嬉しいことはありません。

性欲の波や変化を記録することで、自分自身のコンディションや心の状態に気づくキッカケになれば──という思いで開発に取り組んできました。

この記事では、『アイナーノ』に込めた思いや背景、そしてその経緯について語りたいと思います。まだまだ課題はありますが、他人と比べることなく、自分自身の性と向き合い、自分なりのペースで理解を深められるようなツールを目指して、これからも模索を続けていくつもりです。


性をオープンな話題へ

まず、「自慰行為を記録する」という、ともすれば人目に憚られるテーマを扱うアプリを開発していることについて、「開発者自身は、恥ずかしくないのか?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、性の話題をオープンにすることへの葛藤や、それを恥ずかしいと感じる感覚が、そもそもありませんでした。

例えば、小学校時代に精通した同級生たちのことを、むしろ羨ましく思っていましたし、それが待ち遠しかった記憶があります。自慰行為ができるようになってからは、それを隠すことなくクラスで話していましたし、むしろ、しているのに「していない」と恥ずかしがって隠す同級生たちの気持ちが、不思議でなりませんでした。

いつ、何を観て、どんな行為をしたか──そういった個人的な性の経験についても、思春期の頃から今に至るまで、特に何も恥ずかしいと感じることなく、公に語ることができます。自分にとって性は、人間にとってごく自然なものであり、もっとオープンに語り合えるべき話題のひとつです。


アプリ開発の背景と動機

『アイナーノ』が生まれるまでには、自身の個人的な疑問と、長年の観察がありました。

一般的に、男性の性欲が最も活発になるのは 20 歳前後だと言われています。しかし、自分はその時期、性欲にあまり関心がなく、むしろ控えめでした。逆に、30 代に入ってから、徐々に性欲が高まり始め、以前は性生活に対する不満をパートナーに愚痴られることもありましたが、その頃から性欲の増加を実感するようになりました。

振り返ると、若い頃は勉強や仕事に追われていた為、精神的に余裕がなかったのだと思います。30 代に入り、少しずつ精神的にも落ち着いてきたことが、性欲の増加に繋がったのだと考えています。

この経験を踏まえ、性欲(自慰行為)の傾向や頻度を記録し、視覚的に把握できるアプリ『アイナーノ』を 2018 年に開発しました。自分の性欲がどの程度「異常」なのか、「正常」なのかを客観的に見極めたいと考えました。


性欲を数値で把握する「指数」

『アイナーノ』では、自慰行為の頻度を数値で示す為に「指数」という仕組みを採用しています。この「指数」のアイデアは、とあるラジオ番組での会話から得たものです。その番組では、自慰行為の頻度に関して、「1 週間に 7 回行うと指数は 1.00」とし、「40 歳を過ぎても常に 1.00 を目指すことが心身の健康維持に重要だ」という考え方が紹介されていました。この着想をもとに、アプリとして実現し、自己管理ツールとして進化させました。

また、この指数には科学的根拠も反映されています。ハーバード大学の研究によると、男性が月に 21 回以上射精を行うことで、前立腺がんのリスクが低減することが確認されています。この頻度を指数に換算すると「0.72」になります。この数値を基準にした折れ線グラフを「バイオリズム」として表示し、性欲の周期を視覚的に把握できるようにしました。指数を活用することで、健康指標を参考にしながら、自慰行為の頻度を効果的に管理することが可能です。このグラフが描く曲線は、単なる記録ではなく、心と体の調和を測る独自の指標となります。

ただし、自慰の適切な頻度や管理については、専門的な知識を持ち合わせていない為、明確なガイドラインを提供することができません。この点については深く関心があり、もし専門家の方からの知見が得られれば、アプリの新機能として反映させたいと考えています。例えば、記録された頻度に基づき、個々の状態に合わせたリマインダー機能などを実装することで、よりパーソナルなサポートを提供できるようになると考えています。しかし、現段階ではそのような機能の提供は難しい状況です。


「冒涜的」アプリとプラットフォームの戦い

これまで、Google には繰り返し『アイナーノ』を削除されるという問題に直面してきました。性に関するアプリは「冒涜的」と判断され、幾度となくストアから排除されました。性に関連するコンテンツは、プラットフォームの審査基準において常に厳しい目に晒されており、アプリの収益化にも大きな制限が掛けられています。広告掲載を拒否されたりすることも多く、この分野で活動を続けるのは依然として大きな壁があると感じています。

現在、アプリがストアに掲載されているのは、性に関連する言葉を避け、「セルフプレジャー」などの婉曲的な表現を使用し、アプリが健康管理や日記アプリであることを強調することで、何とか削除を免れている状態です。しかし、この選択は、直接的な表現がストアから削除されるという現実に基づいた結果で、「セルフプレジャー」という表現を使わざるを得ませんでした。ユーザからは「セルフプレジャーではなく、オナニーを使うべきだ」という意見があり、戸惑いました。性に関する表現については、どこまで踏み込むべきかというより、どれがストアに受け入れられるかという現実的な選択肢を取るしかないという状況でした。

Apple のストアでも似たような壁にぶつかりました。性行為の記録を行う「セックス トラッカー」系のアプリは多数存在し、差別化ができていないという理由でリリースすらも拒否されました。しかし、アプリが自慰行為に特化していることや、独自機能として指数やバイオリズムを採用している点を何度も説明し、最終的に 1 ヶ月以上の交渉を経てようやくリリースが承認されました。正直、諦めかけていました。

それでも、2024 年末には念願の 10 万ダウンロードを達成しました。この数字は、多くの方々が『アイナーノ』に価値を感じてくれた証だと思っています。本当に嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいです。


女性ユーザの声が導いた進化

『アイナーノ』は、2018 年リリース当初のアイデアから大きく進化を遂げました。その背景には、女性ユーザから寄せられた貴重なフィードバックが大きく影響しています。元々は自分自身の為の記録アプリとしてスタートしたのですが、予想外に多くの女性ユーザが利用してくださり、次第に「こんな機能が欲しい」といったリクエストが増えていきました。

具体的には、「生理周期を記録したい」「オーガズムは一度の行為で複数回あることがある」「デザインをもっと柔らかくしてほしい」など、さまざまなご意見が寄せられました。これらの声をしっかり受け止め、アプリの機能は段階的に拡張されました。生理日登録機能や排卵日予測、オーガズムの複数回登録、テーマカラーの変更機能などが追加され、より多機能で使いやすく進化しています。

特に、「自慰」という直接的な表現を避け、「セルフプレジャー」という言葉を採用したことが、結果的に、女性ユーザにとってより親しみやすく、使いやすいアプリへと進化する大きな転機となったと感じています。現在では、多くの女性ユーザが自分のセルフプレジャーと向き合いながら、『アイナーノ』を積極的に活用してくださっています。


“タブー”に挑むことの社会的意義

『アイナーノ』は、「自慰行為を記録する」という社会的にタブーとされがちな領域に踏み込んでいる為、時折「社会的意義」について問われることがあります。しかし、正直なところ、そこまで大きな理念を掲げていたわけではありません。あくまでも、自分自身の為に作った個人的なプロジェクトだったからです。

一方で、世の中には性行為や自慰行為をテーマにしたサービスを展開している大手企業も存在しています。もし、そうした企業が『アイナーノ』のようなアプリを本格的に展開し、ビッグデータを蓄積・分析するようになれば、そこには確かに大きな社会的意義があると思います。個人の性的な傾向をもとに、健康面のアドバイスを行ったり、時には心身の問題の予兆を発見できる可能性もあります。

現時点では、そのような取り組みをしている企業やアプリは私の知る限り、ありません。だからこそ、ぜひどこかの企業に挑戦してほしいと願っています。もしそうなれば、『アイナーノ』は競合として太刀打ちできないかもしれませんが、その登場を心から楽しみにしています。


性欲の記録が導く自己理解と探求

『アイナーノ』は、性欲の変動や行為に関心のある方にとって有益なツールです。

性の自己理解を深めることは、単なる好奇心を満たすだけでなく、多くの重要な気づきをもたらします。性欲の変動を詳細に記録することで、精神的な不調や日々のストレスといった、見過ごしがちな心の状態との密接な関連性が明確に見えてきます。

例えば、自身の経験を振り返っても、性欲が低下した時期は、仕事の繁忙期やプライベートでの悩みを抱えていた時期と重なることが少なくありません。日々の記録を積み重ねることで、後から「この時期は本当に大変だったな」と客観的に振り返ることができます。同時に、心身の状態が良好な時期には、アプリの指数が示す数値も高くなることがあり、それを見ることで、当時のポジティブな自分を再認識し、清々しい気持ちを覚えます。

性欲は精神的な状態や生理周期と密接に関連しており、長期的な記録を通じてその変化を意識しながら楽しむことができます。このアプリを使うことで、自分の性欲や心身のバランスについて深く理解し、性に対する認識を新たにすることができます。

実際、自身の経験と探求心から生まれた『アイナーノ』は、性欲の増減を記録する行為が単なる数字の管理にとどまらず、自己理解を深める重要な手段であることを教えてくれました。この思いが少しでも伝わり、読んでいただいた皆様にインスピレーションを与えることができれば嬉しく思います。

今後もユーザからのフィードバックを反映し、さらに使いやすく進化させていく予定です。性に真剣に向き合うその過程が、皆様の毎日をさらに豊かにしてくれると信じています。ぜひ『アイナーノ』をダウンロードして試してみてください。そして、感想をお聞かせいただけると幸いです。


『アイナーノ』アプリの紹介

『アイナーノ』は、自慰行為の頻度や性欲のリズムを記録し、視覚的に分かりやすく表示するアプリです。シンプルで直感的に使えるデザインと、独自の数値化システムである「指数」機能で、心と体の変化を客観的に把握できるツールとして、多くのユーザに支持されています。

現在、iPhone をご利用の方も、Android をご利用の方も、すぐにお使いいただけます。性に関する理解を深める為の第一歩として、ぜひ一度お試しください。



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